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No.42 純愛夫婦すらも引き裂く戦争

 





 いつか書こうと思っていた主人のいとこ夫婦。その2人は、誰もが羨む理想的な夫婦でした。従兄弟は、エアフォースの花形パイロット。爽やかイケメンで、ファミリーパーティーとなれば率先してBBQやフィリピン料理を作る、とってもマメな男性です。コミュニケーション能力も高く、食事の前のお祈りやお祝い事の時のスピーチとなると、皆彼に頼むほど。そして、奥さんの方は、白人と韓国人のハーフで、眼科医となった才女。2人は高校生の時に出会い付き合い初めて、そのまま結婚した、いわゆるハイスクールスイートハートなのです。


 ちょうど私たち夫婦が結婚した4年前に、奥さんがオレゴンの大学を卒業したのですが、その大学在学中、ハワイとオレゴンで離れ離れでも2人の絆は固く支え合っていました。3年前には、ミリラニに5ベッドルームある素敵な1軒家を購入し、米本土に住む親戚がハワイに遊びに来る時には、この2人の家に宿泊。そして、もちろんのことパーティーもその都度開催。今年の年明けのカウントダウンも彼らの家で盛大にやりました。また、2年前には待望の女の子を出産し、さらに奥さんは念願の開業医となったのです。 私は「今時稀有な純愛を貫く自慢の従兄弟夫婦」として紹介するつもりでいました。



 ところが、この夫婦が最近別居してしまったのです。先月のコラムでご紹介したサンフランシスコの従姉妹の結婚式の夜。ぐでんぐでんに酔っ払った義弟が、私たちの宿泊先に帰る車中で、「この結婚式が終わったら、あの2人は別居する方向で動いているんだよ」と衝撃の告白をしたことで知ったのです。実は、前から奥さんの方から話しを聞いていたという義弟。”青天の霹靂”とはまさにこのことで、私には到底信じられない話しでした。「一体何があったの?!」と聞くと、「戦争が変えたんだ」というのです。 


 みなさんも記憶に新しい米軍のシリア攻撃。従兄弟は、その任務に携わったようで、PTSDを患い、それが原因で夫婦仲が変わってしまったのだと義弟は説明してくれました。酔っ払いの言うことなので、どこまで正確なのかは不明ですが、でも、あながち的外れではないと思っています。



 というのも、結婚して10年、知り合って15年以上で、あれだけ仲の良かった2人を引き裂くというのは、「よっぽどのこと」のはず。実際は何がどうなっているのかはわかりませんが、それでもこんなに悲しい出来事はありません。私たち家族の見解は、敬虔なクリスチャンの従兄弟なだけに、それが仕事とは言え、自分がシリアで行ったことに対して、良心の呵責に苛まれ、その苦しみが奥さんの心を傷つける、または怒らせる行為に出てしまっているのかな、と思っています。



 誰からも愛されている2人なだけに、誰もどちらの味方をするというような発言はなく、ただただ見守っています。改めて、正義とはなんなのか。一体何のための戦争なのか、考えさせられます。


*注意* このコラムは、2017年9月に「日刊サン」に掲載されたものです。

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