No.17 日本の非日常は、ハワイの日常

私は30代半ばにして留学を決意し、ハワイに移り住んだわけですが、語学習得に関して、「あ〜もっと若ければ」と何度思ったかわかりません。その一方で、アメリカやハワイの常識や考え方を日々学び、日本の考え方、物の見方しか知らなかったことがどれだけ危険だったかに気づけたことが非常に大きいと思っています。
特に、今までにもこちらのコラムで、我が家のことを色々と書いていますが、日本の生活では想像できなかった様なことが、日常として起きており、だんだんとちょっとしたことでは驚かなくなってしまいました(笑)
今月も、義母の従姉妹のアパートで、上の階の部屋の水道管が壊れ、その水がアンティ家族の部屋にも流れこみ、家の中がめちゃくちゃになってしまいました。多分こちらに住んでいる人は、「よくある話しだよね」と思うことでしょう。実際に、私の知人にも似たような水害被害を受けた人がおり、今月だけで4件もこのような話しを聞いています。結局アンティ夫婦は、代わりの家が用意されるまで、我が家に数日間泊まることになりました。
最初は自分の娘家族のところに避難したのですが、義理の息子が酒癖が悪く、それに耐えられないと聞き、義母が我が家に来るようにオファーしたのです。こんなシチュエーションも、ちょっと非日常的と思いながらも、義母も義父が亡くなってから寂しい思いをしていたので、話し相手ができてよかったと、私たちにはとてもありがたい訪問客でした。
その時を同じくして、今度は、義母のところに、マウイに住む彼女の弟から電話があり、「息子が出所するので、迎えに行って欲しい」と頼まれていました。10年前にドラッグディーラーの家に強盗に押し入り、その後盗難車で走行中、実は単にセイフティチェックの有効期限が切れていることで、警察が呼び止めたところ、自分のやったことがバレたと思い逃走し、その後警察に捕まり全ての悪事がバレ、連邦政府の刑務所に服役。今月やっと刑期を終え出所となったのです。
要は、主人の従兄弟にあたるわけですが、私は一度も会ったことがないので遠い存在に感じている部分もありますが、でも、日本だったら、こんな親戚がいるっていうことだけで大騒ぎで、ひた隠しにするもの。そして、日本だと家族全員が悪者扱いされます。しかし、こちらでおおっぴらにもしませんが、隠しもしません。もちろんその従兄弟がやったことは完全に「悪」でありますが、だからといって、他の家族全員も「悪者」には結びつかないのがアメリカです。
義母は、頼まれたとおりに自分の甥を迎えに行っていました。決していい例ではありませんが、ただ、こうした日本の生活で非日常だったことが、日常として起き、「こういう考え方があるんだ」「こういう受け止めかたがあるんだ」と気づくことで、日本的物の見方に縛られずに、視野を広げることができることが、語学上達よりもっと価値のあることだと思っています。
*注意* このコラムは、2015年11月に「日刊サン」に掲載されたものです。